テレビ朝日系(ANN)の取材によると、近年、西日本を中心に特定外来生物「ヌートリア」が急増しています。稲や野菜を食い荒らす被害が深刻化し、各自治体では駆除と同時に“食材としての活用”にも取り組み始めています。
私の住んでいる広島でも、実際に川を泳ぐヌートリアを何度か見かけたことがあります。最初は「可愛い動物だな」と思っていましたが、体が大きくてすぐにヌートリアだとわかりました。最近は見かけなくなりましたが、駆除されたのか、たまたま見ていないだけなのか…。とはいえ、農作物に被害を与えるようであれば、かわいそうでも駆除は必要だと感じます。生態系への影響も心配です。
ヌートリアとは?原産地と日本に持ち込まれた経緯
ヌートリアは南米原産の大型のネズミの仲間で、明治時代に毛皮採取を目的として日本に持ち込まれました。野生化した個体が西日本を中心に広がり、現在では静岡県や関東地方でも確認されています。体長は最大70cmほどで、水辺を好み、泳ぎや潜水が得意です。
繁殖力が高く、農業被害が拡大
ヌートリアの最大の問題は、その繁殖力の強さです。栄養状態が良ければ年に2~3回出産し、一度に5~6匹の子を産みます。そのため、一度生息域に定着すると短期間で数が増え、農作物に大きな被害を及ぼします。
実際、静岡県浜松市では2024年度にヌートリアの目撃情報が619件、被害通報は18件と急増。稲の葉や野菜を食い荒らし、被害農家からは「全体の収穫量の2割が被害を受けた」との声も上がっています。
ヌートリアを“食材”として再利用する動き
近年、駆除したヌートリアを廃棄するのではなく、ジビエ料理として活用する動きが広がっています。静岡県菊川市の西欧料理店「サヴァカ」では、ローストしたヌートリア肉を使ったパスタなどを提供。シェフによると「鶏肉のように淡白で柔らかく、臭みも少ない」とのことです。
また、ペットフードや毛皮を使った座布団、教材用のはく製など、食材以外の用途にも広がりを見せています。単なる害獣駆除にとどまらず、資源として再利用する“共生型の取り組み”が注目されています。
外来種とどう向き合うべきか
ヌートリアはもともと人間の手によって持ち込まれた外来種です。駆除だけでなく、「どう共生していくか」を考える時期に来ているのかもしれません。ただし、農業や生態系への影響を考えると、早期の対策と地域全体での協力が欠かせません。
外来生物の問題は、ヌートリアだけに限りません。アライグマやカミツキガメなど、日本各地で多様な外来種が確認されています。生態系バランスを守るためには、正しい知識と迅速な対応が重要です。
まとめ:駆除と共生のバランスを考える時代へ
ヌートリアは、農業被害や生態系の破壊といった深刻な問題を引き起こしていますが、一方で“食材”としての可能性を持つ動物でもあります。地域の知恵や工夫を生かし、「害獣から資源へ」という新たな発想が広がっていくことを期待したいです。
今後、ヌートリアの分布は関東方面にも拡大すると予想されており、スピード感を持った対策が求められています。地域の安全と生態系のバランスを守るために、行政・市民が一体となった取り組みが必要なのではないでしょうか。


