近年、スマホのAI画像判定アプリや検索機能で「キノコの種類」を調べる人が増えています。しかし、AI判定を信用した結果、毒キノコを誤食する事故が相次いでいるのをご存じでしょうか。
2025年11月、和歌山市で70代男性がAI判定を信じて採取したキノコを食べ、嘔吐症状で一時入院する食中毒事件が発生しました。この記事では、その経緯と問題点、そして安全にキノコを扱うための重要ポイントをまとめます。
■ 事件概要|AIは「食べられる」と判定…実際は猛毒キノコのツキヨタケ
和歌山市生活保健課によると、和歌山市の70代男性は奈良県の山中で「ヒラタケ」や「シイタケ」に似たキノコを採取。翌日、植物園など専門機関に連絡を試みたものの繋がらず、代わりにAI画像判定を利用しました。
AIはそのキノコを
「シイタケ、またはヒラタケで食べられる」
と回答。
しかし、男性が焼いて食べたところ、約30分後に激しい嘔吐を発症し、一時入院する事態に。
後の調査で、そのキノコは**強い毒性を持つ「ツキヨタケ」**であることが判明しました。
■ ツキヨタケとは?|見た目が食用キノコにそっくりで「最も事故が多い毒キノコ」
ツキヨタケは、日本で食中毒被害が最も多い毒キノコの一つ。ヒラタケ・シイタケ・ムキタケなど食用キノコと非常によく似ているため、毎年多くの誤食事故が発生しています。
● ツキヨタケの特徴
- 傘の裏のひだの付け根に隆起帯がある
- 内部に黒いシミが見られる(ない個体もある)
- 加熱しても毒は消えない
- 暗闇でぼんやり光ることから「月夜茸(つきよたけ)」と呼ばれる
見た目がほぼ同じため、専門家でも一見では判断が難しいケースがあるほどです。
■ AI判定はなぜ危険?|写真1枚でキノコ同定は「原理的に不可能」
● AIは「それらしく見える答え」を返す
ITジャーナリスト山口健太氏の検証では、ChatGPTやGeminiは警告を出すものの、
質問の仕方によって誤判定する可能性があるとの指摘も。
また一般向けAIは回答の責任を負わないため、最終判断は利用者に委ねられます。
● 専門家の研究でも「判定精度は低い」
2022年の海外調査では、AIキノコ判定アプリの正答率は平均約50%。
毒キノコだけに限ると正答率は**わずか44%**というデータもあります。
● 画像検索でも誤判定が多数
テレビ報道の実験では、
- ツキヨタケ → 「シイタケ」と判定
- シイタケ → 「ツキヨタケ」と判定
という逆の誤判定も確認されました。
■ 背景には「猛暑」も影響|夏と秋のキノコが同時発生し識別がさらに困難に
2025年は猛暑の影響で、夏のキノコが秋にずれ込み、秋のキノコと同時発生する異例の状況に。
そのため専門家でも従来の発生時期の感覚が通用せず、識別が難しくなっています。
- 夏キノコのタマゴタケが秋に発生
- 梅雨キノコのキツネノハナガサが秋に発生
- シロオニタケなど猛毒キノコが長期間発生
自然環境の変化により、誤食リスクは確実に高まっています。
■ 和歌山市が呼びかけ:「AIや図鑑で自己判断しないで」
和歌山市の生活保健課は次のように注意を促しています。
「AIや図鑑で自己判断するのは危険。
食用と確実に判定できないキノコは、採らない・食べない・売らない・人にあげないで」
■ 専門家が教える:キノコを安全に扱うための5つの鉄則
① 知らないキノコは絶対に採らない・食べない
基本中の基本です。
② AI・アプリ・ネット検索での判定は信用しない
画像判定は誤認の宝庫。
③ 必ず詳しい専門家に鑑定してもらう
自治体の自然博物館・菌類学会・キノコ鑑定会など。
④ 見た目が「そっくりな」キノコは特に要注意
シイタケ × ツキヨタケ
クリタケ × ニガクリタケ
などは毎年多発。
⑤ 少しでも不安なら触らない・持ち帰らない
「多分大丈夫」は最も危険。
■ まとめ|AIは便利だが「命を預ける判断」には使ってはいけない
今回の食中毒は「AIが食べられると言ったから大丈夫」という誤った安心感が生んだ事故でした。
AIは万能ではありません。
特に自然物の判定は、
写真1枚では原理的に特定できない
という限界があります。
キノコ採取は自然の恵みを楽しめる一方で、誤れば命に関わる危険もあります。
安全のために、
必ず専門家に確認する
見分けられないキノコは絶対に食べない
この2つだけは忘れないようにしましょう。
*出典元:MBSニュース/テレビ朝日系(ANN)ほか報道


