福山市内の大学学生寮で、男女61人が下痢や腹痛などの食中毒症状を訴える集団感染が発生しました。
原因として疑われているのは、**加熱にも強いことで知られる「ウェルシュ菌」**です。
今回の事例は、学生寮や学校給食、社員食堂など大量調理の現場だけでなく、一般家庭にも起こり得る食中毒リスクを改めて浮き彫りにしました。
福山市の大学学生寮で何が起きたのか
福山市保健所によると、12月8日正午ごろ、学生寮の給食業務を請け負う業者から
「下痢や腹痛の症状が出ている人が複数いる」との連絡が入り、調査が始まりました。
その結果、
- 発症者:学生および男性職員1人を含む計61人
- 主な症状:下痢、腹痛
- 重症者:なし(全員回復傾向)
症状が出た一部の人の便から、ウェルシュ菌が検出されています。
原因とみられる食事内容
保健所は、12月6日の朝食または夕食が原因とみており、提供されていたメニューは以下の通りです。
- 照り焼きミートボール
- いんげんのごまあえ
- ブロッコリーの和風スパゲティ
- 肉じゃが
いずれも、大量調理・作り置きが発生しやすい献立である点が特徴です。
ウェルシュ菌とは?なぜ加熱しても危険なのか
ウェルシュ菌の特徴
ウェルシュ菌は、
- 動物の腸内や土壌など自然界に広く存在
- **酸素の少ない環境(嫌気性)**で増殖
- 高温などの不利な環境下では**「芽胞(がほう)」を形成**
この芽胞状態になると100℃の加熱でも死滅しないため、
「しっかり火を通したから大丈夫」という考えが通用しません。
食中毒の発症メカニズム
- 調理時の加熱で通常の菌は死滅
- 芽胞だけが生き残る
- 調理後、**ゆっくり冷却される過程(12~50℃)**で急増殖
- 小腸内で毒素を産生 → 腹痛・下痢を引き起こす
発症までの時間は**食後6~18時間(平均10時間)**と比較的短く、
嘔吐が少ないのも特徴です。
なぜ大量調理施設で起きやすいのか
ウェルシュ菌食中毒は、以下のような現場で多発します。
- 学生寮・学校給食
- 社員食堂
- 旅館・ホテル
- 仕出し・弁当業者
理由としては、
- 大鍋での大量調理
- 前日調理・作り置きの常態化
- 急速冷却設備の不足
- 温度管理記録の形骸化
- 衛生教育の不足
など、現場の人手不足やコスト圧迫が背景にあるケースも少なくありません。
行政の対応|給食業者は営業禁止処分に
福山市保健所は、12日付で給食を調理していた
「魚国総本社(福山市)」に対し、当面の営業禁止処分を出しました。
あわせて、次のように注意を呼びかけています。
季節にかかわらず、作り置きを避け、調理後は適切な温度で管理してほしい
家庭でも注意!ウェルシュ菌を防ぐための予防策
✔ 作り置きは極力避ける
特に、
- カレー
- シチュー
- 煮物
- スープ類
は高リスク食品です。
✔ 保存する場合は「小分け&急冷」
- 鍋ごと放置しない
- 平たい容器に小分け
- 氷水などでできるだけ早く冷ます
- 速やかに冷蔵・冷凍
✔ 再加熱は「よく混ぜて、すぐ食べる」
- 鍋底までしっかりかき混ぜる
- 中心部まで十分に加熱
- 再加熱後は長時間放置しない
「2日目のカレー」が危険と言われる理由
「2日目のカレーは美味しい」と言われますが、
鍋に入れたまま常温放置すると、ウェルシュ菌が爆発的に増殖します。
再加熱しても安心できない菌がいるという事実を、
私たちは改めて認識する必要があります。
まとめ|食の安全は“知識と管理”で守れる
今回の福山市の集団食中毒は、
誰の身近にもある食事が原因になり得るという点で、決して他人事ではありません。
- 加熱=安全ではない
- 「ふやさない」「早く冷ます」「すぐ食べる」が基本
- 大量調理・作り置きには特に注意
食の安全はコストではなく、守るべき投資です。
同様の事故を繰り返さないためにも、正しい知識と管理が求められています。


