ジャムなのに「瓶」を使わない――アヲハタが30〜40代の“ジャム離れ”を止めた意外な突破口とは

時事・ニュース

「ジャムといえば瓶」。
この“常識”を真っ向から覆し、大ヒット商品となったのが、老舗ジャムメーカー・アヲハタの新商品「アヲハタ Spoon Free」です。

なぜ、あえて瓶をやめたのか。
その背景には、30〜40代の現役・子育て世代で進む「ジャム離れ」という、業界にとって深刻な課題がありました。

本記事では、プレジデントオンラインの取材内容をもとに、

  • ジャム市場が縮小している本当の理由
  • 瓶ジャムが抱えていた“朝の小さな不便”
  • 「スプーンいらず」が支持された決定的な理由
  • 老舗メーカーが2年かけてたどり着いた答え

を、マーケティング視点でわかりやすく解説します。


ジャム市場はなぜ縮小しているのか?30〜40代の「ジャム離れ」

アヲハタは国内トップシェアを誇るジャムメーカーです。
しかし同社は以前から、ある変化に気づいていました。

「30〜40代の瓶ジャム消費が、明らかに伸びていない」

実際、総務省の家計調査でも、国内のジャム購入量は約20年で約2割減少。
とくに減少が顕著だったのが、子育て・共働き世代でした。

若い世代がジャムを買わなくなった理由

アヲハタが行ったモニター調査で浮かび上がったのは、
味や価格ではなく、生活の中のちょっとした不便でした。

  • スプーンを使って、洗い物が増える
  • 子どもが舐めたスプーンを瓶に戻してしまう不安
  • 瓶のゴミが捨てづらい
  • 忙しい朝に「ワンアクション多い」

どれも致命的ではありません。
しかし、慌ただしい朝の積み重ねの中で、「ジャムは面倒」という印象を作っていたのです。


発想の転換:「スプーン1本」をなくすだけで朝が変わる

そこでアヲハタがたどり着いた答えが、

「スプーンを使わずにジャムを塗れる」

という、極めてシンプルな発想でした。

「瓶ジャムの否定」ではなく「新しい選択肢」

新商品「アヲハタ Spoon Free」は、
プラスチックボトル容器を採用し、片手で直接パンに絞り出せる仕様。

  • スプーン不要
  • 洗い物が減る
  • 衛生面の不安がない
  • 子どもが使っても安心
  • 落としても割れない

この利便性は、子育て世代の朝のリアルに深く刺さりました。

実際、発売から3年間で出荷額は約3倍に成長。
「日本子育て支援大賞2024」も受賞しています。


キャッチコピーは「さよならスプーン」――社内がざわついた理由

ボトル上部に大きく書かれたコピーは、
「さよならスプーン」

この言葉は、社内でも賛否を呼びました。

  • 「瓶ジャムを否定しているように見えないか」
  • 「長年のファンを裏切らないか」

老舗だからこそ、迷いもあったといいます。

しかし結果的に、このコピーは
“不便を我慢してきた人たちの本音”を代弁する言葉となりました。

重要なのは、「さよなら瓶」ではなく「さよならスプーン」。
瓶ジャムと共存する、新しい使い分けの提案だったのです。


「チューブに替えただけ」ではない、2年間の執念

Spoon Freeは、単に容器を変えただけの商品ではありません。

最大の課題は、
「瓶ジャムと同じ満足感を、チューブでどう再現するか」

ミリ単位で調整された「口径」と「果肉感」

  • 出し口のサイズは10種類以上テスト
  • 果肉のカットサイズは7mmなど専用刃を開発
  • 詰まりを防ぎつつ、果実感を残す設計
  • 濃度を限界まで高め、味の存在感を確保

開発担当者は、「自社の瓶ジャム」が最大のライバルだったと語ります。

経営陣からの
「もっと果肉感を出せないか?」
という要求にも応え、妥協しない改良を重ねました。


冷蔵庫・賞味期限まで計算された生活者視点

Spoon Freeのこだわりは、味だけではありません。

  • 冷蔵庫ポケットに入る楕円形ボトル
  • 2週間で使い切れる165g設計
  • 力を入れずに絞れるボトル硬度

すべてが、
「忙しい家庭で、最後まで無駄なく使い切る」
ことを前提に設計されています。


高齢者にもメリットがある“スプーンフリー”

意外にも、この商品は高齢者層にもメリットがあります。

  • 瓶のフタが開けにくい
  • 力が弱くなってきた

そうした悩みを持つ人にとっても、
片手で使えるジャムは新しい選択肢になり得ます。


まとめ|ヒットの正体は「小さな不便」を見逃さなかったこと

アヲハタ Spoon Freeの成功は、
革新的な技術よりも、生活者目線の徹底にありました。

  • 「たかがスプーン1本」
  • 「ほんの少しの洗い物」

この“小さな不便”を見逃さず、
老舗が本気で向き合ったからこそ、生まれたヒット商品です。

「便利さは、忙しい人を救う」

アヲハタの挑戦は、
商品開発・マーケティングに携わるすべての人にとって、
大きなヒントになる事例といえるでしょう。

実は私自身も、ここ最近はジャムをほとんど買っていませんでした。
ですがこの記事を整理する中で、「なるほど、これは使ってみたい」と感じる場面が多くありました。次にスーパーへ行ったときには、新しいアヲハタのジャムを手に取って、久しぶりに朝食で味わってみようと思います。