人手不足の物流業界が直面する言語・運転技術・商慣習の壁【日本社会と外国人】
日本の物流業界はいま、かつてない人手不足に直面しています。
2030年には20万〜30万人のトラックドライバーが不足し、物流の約4割が運べなくなる可能性があると指摘されています。
こうした状況を受け、政府は在留資格「特定技能」に**「自動車運送業」**を追加し、外国人ドライバーの受け入れを本格化させました。
しかし、外国人材は「呼べばすぐ戦力になる」存在ではありません。日本語、運転技術、そして日本独自の物流商慣習という高い壁が立ちはだかっています。
本記事では、Yahoo!ニュース オリジナル特集の記事を出典として、物流業界が直面する現実と、外国人ドライバー育成の課題・展望を整理します。
深刻化するトラックドライバー不足の実態
国内のトラックドライバー数は、1990年代半ばの約100万人から、2024年には約86万人まで減少しました。
年齢構成を見ると、50歳以上が過半数を占め、若年層の確保が極めて難しくなっています。
- 年間所得:約437万円(全産業平均を下回る)
- 年間労働時間:全産業平均より約400時間長い
「忙しいのに稼げない」というイメージが定着し、担い手不足は加速しています。
外国人ドライバー受け入れを可能にした制度改正
2024年、在留資格「特定技能」の対象に自動車運送業が追加され、外国人が正式にトラックドライバーとして働ける道が開かれました。
ただし、要件は厳格です。
- 特定技能1号(自動車運送業)評価試験に合格
- 日本語能力試験N4相当以上
- 日本の第一種運転免許の取得(外免切替または新規取得)
免許取得前は「特定活動(6カ月)」で滞在し、その間に免許・日本語・試験対策を同時進行しなければなりません。
外国人ドライバー育成にかかる時間とコスト
外国人ドライバーを採用しても、すぐに現場へ出せるわけではありません。
- 座学研修(法令・安全運転)
- 構内走行・路上走行の実習
- 接客・納品マナー教育
独り立ちまでにはおおむね半年以上を要し、その間の教育コストは
1人あたり月数十万〜100万円近くにのぼることもあります。
この負担の大きさが、外国人活用が進まなかった最大の要因でした。
先行事例:イズミ物流の外国人ドライバー育成
東京都のイズミ物流では、2024年以降、外国人ドライバーの採用を本格化。
2025年11月時点で18人在籍し、すでに複数名がワンマン乗務を担っています。
同社は以下のような複線的な採用ルートを確保しています。
- 国内日本語学校
- 特定技能人材の紹介会社
- 海外送り出し機関
- 自社SNSによる直接応募
住居確保や生活支援、日本語教育、免許取得支援まで自社で対応し、
「将来の輸送力を守るための投資」と位置づけています。
中小企業を支える外国人ドライバー支援会社
中小企業向けには、日本語教育や試験対策をパッケージ化した
外国人ドライバー支援会社も増えています。
- 日本語教育
- 特定技能評価試験対策
- 教習所手配
- 在留資格切り替え支援
企業負担は1人あたり50万〜80万円程度とされていますが、
支援の質には差があり、事業者選びが重要です。
日本独自の商慣習と文化の壁
運転技術以上に難しいのが、日本特有の物流品質への対応です。
- 時間厳守
- 丁寧な荷扱い
- 配送先での礼儀や挨拶
- 細かな顧客対応
文化の違いがクレームにつながるケースもあり、
「事故を起こさない」だけでは一人前とは言えない現実があります。
外国人任せにしない「待遇改善」の重要性
外国人ドライバーの多くは、日本での定着を望んでいます。
しかし、低待遇のままでは他業種へ流出する可能性は否定できません。
2025年に成立した「トラック適正化二法」は、
- 多重下請け構造の是正
- ドライバー処遇の改善
を義務づけており、業界全体の転換点となる可能性があります。
まとめ|外国人ドライバーは物流を支える「仲間」
外国人ドライバーの受け入れは、単なる人手不足対策ではありません。
- 教育への投資
- 働きやすい職場環境
- 国籍を問わない適正な評価
これらがそろって初めて、持続可能な物流が実現します。
誰がハンドルを握るのかではなく、どう支えるのか。
その視点を社会全体で共有できるかが、日本の物流の未来を左右しています。
出典元:Yahoo!ニュース オリジナル 特集
「外国人ドライバーをどう育成?──人手不足の物流業界が直面する言語、運転技術、商慣習の壁」
配信日:2024年12月26日
文・刈屋大輔(ジャーナリスト)
掲載元:Yahoo!ニュース オリジナル
※本記事は上記ニュースを参考に、内容を要約・再構成し、独自の視点で解説しています。


