インド東部で、野生のゾウによる深刻な被害が続いています。
2026年の年明け以降、少なくとも19人が命を落とし、地元当局は同一のゾウが連続して人を襲っている可能性が高いとして、捕獲に向けて捜索を続けています。
しかしこの問題は、単なる「凶暴な動物の暴走」ではありません。
背後には、人間の生活圏と野生動物の生息域が重なってしまった現実があります。
ジャルカンド州で何が起きているのか
被害が集中しているのは、インド東部ジャルカンド州の西シンブム地区。森林地帯に隣接した集落で、ゾウが夜間に侵入し、人々を襲う事件が相次いでいます。
報道によると、襲撃しているのは雄の成獣1頭とみられています。
このゾウの特徴は、
- 日中は森に潜む
- 夜になると村に現れる
- 追跡が非常に困難
- 発情期で攻撃性が高まっている可能性
という、まさに「人間にとって最も危険な状態」にあることです。
9日には子ども2人が犠牲になり、追い払おうとした森林官も重傷を負いました。
なぜ捕獲がこんなにも難しいのか
この地域ではドローンまで投入してゾウを追跡していますが、捜索は簡単ではありません。
その理由のひとつが、この森林地帯が極左武装組織(毛沢東主義派)の活動地域に近いことです。
治安上の問題から、当局が森の奥深くまで立ち入ることが難しく、ゾウの追跡・捕獲が遅れています。
つまり、
「危険なゾウ」+「入り込めない森」
という、非常に厄介な状況が重なっているのです。
インドで急増する「ゾウ被害」の実態
今回の事件は、決して例外ではありません。
インドでは
2019年から2023年の5年間で、2800人以上がゾウに殺されています。
その背景には、急速な森林破壊と都市開発があります。
- 農地の拡大
- 鉱山開発
- 道路や鉄道の建設
- 住宅地の拡張
これらによって、ゾウが代々使ってきた「移動ルート」や「水場」が分断され、人の暮らしとゾウの行動範囲が重なってしまったのです。
列車と衝突するゾウたち
人間だけが被害者ではありません。
ゾウもまた、命を落としています。
■インド・アッサム州(2025年12月)
旅客列車がゾウの群れに突っ込み、7頭が死亡。
ゾウ約22,000頭のうち、4,000頭以上が生息する地域でした。
■スリランカ(2025年2月)
保護区付近の線路で列車がゾウの群れと衝突し、6頭が死亡。
スリランカではゾウは神聖な動物とされ、殺傷は犯罪です。
つまり、人間のインフラが、ゾウの生存ルートを寸断しているのです。
ヤフコメに見る「現地のリアル」
日本の読者のコメントにも、本質を突く意見が多くありました。
「象の生息地と人間の生活域が重なっていることが問題」
「象は記憶を頼りに水場や森に戻ってくるが、人間がそれを壊してしまう」
特に印象的だったのが、
象は代々受け継いできた記憶で同じ道を通る
そこに人間が街を作ることで、象にとっては“障害物”になる
という指摘です。
これは、日本でクマが里に降りてくる問題と非常によく似ています。
人とゾウは共存できるのか
ゾウは、
- 高い知能
- 優れた記憶力
- 強い家族意識
を持つ動物です。
しかし同時に、体重数トン、時速40km近くで走れる“歩く戦車”でもあります。
人間の側が生息地を奪い続ける限り、
「ゾウが人里に来る」のではなく、
「人間がゾウの世界に入り込んでいる」状態が続きます。
捕獲や駆除だけでは、根本的な解決にはなりません。
必要なのは、
- ゾウの移動ルートの保全
- 生息地の回復
- 人と野生動物の境界を明確にする政策
です。
まとめ|ゾウは“敵”ではない
今回のインドの悲劇は、
人と自然のバランスが崩れた結果とも言えます。
ゾウは悪意を持って人を襲っているわけではありません。
生きるために、記憶にある水や食べ物を求めて移動しているだけなのです。
日本のクマ問題と同じように、
このニュースは決して「遠い国の話」ではありません。
人間と野生動物の共存が、
いま世界中で問われています。


