2025年12月17日、EU(欧州連合)が掲げてきた「2035年エンジン車新車販売禁止」方針を事実上撤回するという大きな政策転換が明らかになりました。
これまで電気自動車(EV)一辺倒だった欧州の環境規制は、CO2排出量90%削減という条件付きで、ハイブリッド車(HV)を含むエンジン車の販売継続を認める方向へ舵を切ります。
この決定は、欧州自動車産業だけでなく、トヨタをはじめとする日本メーカーにも大きな影響を与えそうです。
EUが撤回した「2035年エンジン車禁止」とは?
EUは2021年、
「2035年以降、走行時にCO2を排出する新車の販売を原則禁止する」
という厳格な環境規制を決定しました。
これは事実上、
- ガソリン車
- ディーゼル車
- ハイブリッド車(HV)
を市場から締め出し、EVのみを新車として認める政策でした。
しかし今回、EU欧州委員会はこの方針を修正し、
- 2021年比でCO2排出量を平均90%削減
- 条件を満たせば2035年以降もエンジン搭載車の販売を容認
という、現実路線へ転換する方針を発表しました。
なぜEUは方針転換したのか?3つの理由
① EV普及の「想定外の遅れ」
EUが目標としていたEVシフトは、現実には進んでいません。
欧州市場におけるEVの新車販売比率は**約16%**にとどまり、インフラ整備や価格面での課題が浮き彫りになっています。
② 中国EVメーカーの急成長
欧州市場では、
- 中国メーカーの低価格EV
- テスラなど米国勢
がシェアを拡大。
結果的に、欧州メーカー自身が競争力を失う事態が起きています。
高関税を課しても、中国勢はPHEV(プラグインハイブリッド)にシフトするなど、規制を巧みに回避しています。
③ 経済・雇用への深刻な影響
ドイツを中心に、
- 工場閉鎖
- 雇用不安
- エネルギー価格の高騰
が現実問題として顕在化。
「環境優先」だけでは産業と雇用を守れないという判断が、今回の転換を後押ししました。
日本メーカーにとっては「追い風」
今回の決定で最も恩恵を受けるのが、ハイブリッド技術に強みを持つ日本メーカーです。
特にトヨタは、
- EV一本化に慎重
- HV・PHEV・水素などマルチパスウェイ戦略を継続
してきました。
結果として、
「EV一辺倒は現実的ではない」というEUの結論は、トヨタの戦略が正しかったことを裏付ける形になっています。
それでもEVは不要になるのか?
今回の規制緩和は、EVを否定するものではありません。
EUも、
- 90%削減達成にはEV比率拡大が不可欠
- 電動化投資自体は継続
という立場です。
つまり今後は、
- EV
- ハイブリッド
- PHEV
- 合成燃料対応エンジン
など、多様な技術が併存する時代へと移行していくと考えられます。
EU最終決定までの課題と今後の焦点
この方針はまだ、
- EU加盟国
- 欧州議会
の承認が必要です。
フランスやスペインなどは、
「電動化への投資が遅れる」として反対しており、今後も調整は難航する可能性があります。
ただし、2035年が近づくにつれて、さらに条件が緩和される可能性も否定できません。
まとめ|「理想」から「現実」へ転換したEUの選択
今回のEUの決定は、
- 理想先行の環境政策
- 現実の経済・産業・雇用
の間で揺れた結果とも言えます。
2035年エンジン車ゼロは現実的ではなかった。
そう認めたEUの転換は、世界の自動車政策に大きな影響を与えるでしょう。
そして、日本の自動車産業にとっては、長年積み重ねてきたハイブリッド技術が再評価される大きな転機となりそうです。


