「日本の不動産はバーゲンセール」中国資本が買い占める温泉・リゾート地の現実

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出典:東洋経済オンライン(2025年10月25日配信)

山梨県・石和温泉をはじめ、日本各地のリゾートや温泉地で進む「中国資本による静かな買収劇」。登記簿を300件以上調査した結果、表に出ない買収が全国的に広がっていることが明らかになりました。

■ 石和温泉が“チャイナタウン化”? 地元が抱く複雑な胸の内

東京都心から電車で2時間弱。山梨県笛吹市の石和温泉では、観光客の多くが中国人で占められています。温泉街のホテルの約25%が中国資本の手に渡り、経営者も観光客も中国人という構図が成立しています。

石和温泉旅館協同組合の古屋理事長はこう語ります。
「ここがチャイナタウンになっても、真っ暗なゴーストタウンになるよりはマシです。」

■ バブル崩壊で衰退した温泉街、救ったのは“外国資本”だった

かつて関東有数の歓楽街だった石和温泉も、バブル崩壊後は一気に衰退。旅館の半数が廃業する中で、中国資本が相次いで参入しました。後継者不足やコロナ禍の経営難で売却された旅館・ホテルを、中国企業や個人投資家が次々と買収しています。

例えば、ホテル「甲斐路」は通販業を営む孫志民氏が2021年に買収。リフォームと中国SNSでの宣伝を行い、宿泊客の8割が中国人という人気ホテルに生まれ変わりました。

■ 中国人投資家の本音:「日本の不動産は1〜2割安い。長期投資には最適」

孫氏は取材にこう答えています。
「中国では土地は国の所有で、個人が買うことはできません。日本では土地を買える。価格も中国より1〜2割安い。長期で見れば、日本は非常に魅力的な投資先です。」

彼の投資は山梨だけにとどまらず、栃木県那須町の高級リゾートホテルにも及んでいます。リフォームに数億円を投じ、国内外の富裕層をターゲットにした経営戦略で再生を果たしました。

■ コスト高な“日本流経営”では生き残れない?

同じく石和温泉で「花京」を買収した董保国氏も、「コストが高い日本人経営では今の時代に合わない」と語ります。人件費や設備投資を抑え、リフォームとSNSマーケティングで黒字化を実現。日本人客も増えているといいます。

こうした成功例は、地方の温泉街で相次ぐ「中国資本による再生モデル」として注目されています。

■ 日本の土地が“バーゲンセール”状態に?

笛吹市役所の担当者も、「中国人経営のホテルが増えているのは把握している」と認めています。富士山麓の人気観光地に比べて宿泊費が3分の1程度と安く、中国人観光客が増加。
一方で、市民の間では「中国色が強まっている」との懸念も出ています。

市の担当者は次のようにコメントしています。
「中国資本による買収は企業間取引の結果。規制することは難しい。とはいえ宿泊者が増えれば税収も増え、地域の活性化につながるのは事実です。」

中国の不動産サイトには今も、「軽井沢」「箱根」「北海道ニセコ」など日本の人気リゾート地の物件情報が多数掲載されています。中には“日本移住支援付き”といった広告も見られ、日本の土地が“バーゲンセール”のように扱われている実態が浮き彫りとなりました。

■ 登記簿300件を追跡! 39自治体・67施設が中国資本に

取材班が調査した結果、少なくとも全国39自治体の67施設が中国資本によって買収されていることが確認されました。箱根、伊豆、新潟、鳥取など、全国各地の温泉・リゾート地で同様の動きが見られます。

一部では「実質的な所有者を隠した買収」も確認され、登記情報だけでは把握できないケースも多いといいます。こうした“静かな買収劇”は、すでに全国的に進行しているのです。

■ 日本が今すべきことは「規制」か「共生」か

ヤフーコメントでは、「外国人による土地購入の規制が必要」との声が多数を占めました。一方で、「外国資本が地方を再生させているのも事実」との意見もあり、議論は二分しています。

日本の観光地が持つ文化と景観を守りながら、いかに持続可能な経済を築いていくか。
今、国と地方自治体の真の舵取りが求められています。

この記事は、東洋経済オンライン掲載「『日本の不動産はバーゲンセール』中国人に次々と買われるリゾートや温泉地帯」(2025年10月25日配信) をもとに再構成しています。