ガラパゴス諸島のトマトに「逆進化」の兆候──古代遺伝子がよみがえる理由とは?

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エクアドル沖に浮かぶガラパゴス諸島で、植物進化の常識を揺さぶる驚きの発見が報告されました。 野生のトマト「ソラナム・ペンネリ」が、数百万年間失われていた“古代の化合物”を再び生成していたのです。 これは、進化が「前へ進むだけではない」ことを示す典型例として、世界中の研究者の注目を集めています。

本記事では、逆進化が起きた理由、研究が示す可能性、農業や医薬への応用についてわかりやすく解説します。


■ ガラパゴスの野生トマトで見つかった「逆進化」とは?

研究対象となったのは、ガラパゴス諸島に自生する野生トマト「ソラナム・ペンネリ」。 2024年、アルカロイド(植物が持つ天然の防御物質)を調べる中で、研究チームは“異変”に気づきました。

● 通常のトマトには見られない「古代の化合物」を生成

調査の結果、諸島の西側の新しい島に生育するソラナム・ペンネリが、進化の過程で失われたはずのアルカロイドを再び作り出していたことが判明。これは、ナス科植物の祖先が持っていたとされる性質です。

同じ植物でありながら、東側の古い島に生育するトマトは「現代型」の防御システムを持っており、両者の違いは分子レベルではっきりと確認されました。

この現象こそ、研究者たちが「逆進化」と呼ぶものです。


■ 逆進化が起きた背景:過酷な環境が鍵だった

なぜ西側の島のトマトだけが古代の性質を取り戻したのでしょうか。

● 西側の島は「荒涼として土壌も未発達」

ガラパゴス諸島は、東が古く、西が若い火山島という特徴があります。 研究チームは、若い西側の島のほうが過酷な環境で栄養も少ないため、トマトが生き残るために古代の防御・生存機能を再活性化させた可能性を示唆しています。

● 古代のアルカロイドが果たす役割の仮説

研究者は次のようなメリットを推測しています。

  • 草食動物や昆虫を寄せ付けない毒性物質としての働き
  • 根の栄養吸収を助ける可能性
  • 根を病原菌から守る働き

これらの性質は、栄養の乏しい火山島での生存に大きく貢献したと考えられています。


■ 遺伝子の変化は「驚くほどシンプル」だった

西側のソラナム・ペンネリが古代の性質に戻った理由を詳しく分析すると、アミノ酸の構成に生じたごく小さな変化が原因だったことが分かりました。

研究者は同じ遺伝子操作をタバコでも再現し、祖先の化合物が再び生成されることを確認。 わずかな遺伝的変化が植物の化学的性質に大きな影響を与えることが明らかになったのです。


■ 逆進化は「珍しいが特別ではない」──専門家の見解

コーネル大学の進化生態学者アヌラグ・アグラワル氏は、「逆進化は驚くべきことではない」と語ります。

● 進化とは“前進のみ”ではない

彼は、進化を以下のように説明しています。

  • 進化は直線的な前進ではなく「試行錯誤」のプロセス
  • 環境が変わると過去の形質に戻ることもある
  • 生物は必要な形質を残し、不要になれば失い、時に取り戻す

実際に自然界には多くの「逆戻り」の例があります。

  • 洞窟に適応し目を失った動物
  • ペンギンやダチョウのように飛べなくなった鳥
  • 海に戻った哺乳類(クジラ・イルカ)が後肢を失った例

今回のトマトの事例も、こうしたエピソードのひとつと言えるでしょう。


■ 研究が切り開く未来:農業・医薬品への応用可能性

今回の発見は、単なる進化の話にとどまりません。研究者たちは次のような応用の道を示唆しています。

  • 害虫に強い作物の開発(古代のアルカロイド利用)
  • より強力な天然由来の農薬の研究
  • 医薬品開発につながる可能性

ただし、アルカロイドの濃度が高いと人間への毒性もあるため、制御しながら安全に活用する研究が必要とされています。


■ まとめ:逆進化は自然界の“柔軟さ”を示す重要なサイン

ガラパゴス諸島で見つかった野生トマトの逆進化は、進化の概念をより深く理解するための貴重な手がかりです。

環境によるプレッシャーが生物を「祖先の形質」に戻すことがあるという今回の研究は、私たちがこれまで抱いていた「進化=前に進むだけ」という固定観念を覆します。

今後さらに研究が進めば、農業や医薬品開発の分野に大きな恩恵をもたらす可能性もあり、注目すべき発見となっています。


※元記事:CNN.co.jp「ガラパゴス諸島のトマトに『逆進化』の兆候」より